目上の相手への説明や質問への回答としてよく使われるフレーズに、「存じておりました」が挙げられます。
今回はこのフレーズについて解説してみたいと思います。
「存じておりました」とは?
「存じておりました」を文法的に分解すると、「存じる」に接続助詞「て」が付き、「おる」、「ます」、「た」がそれぞれ活用しながら合体しています。
「存じる」は「思っている」や「(物事や事情を)知っている」の謙譲語であり、この場合は連用形「存じ」となっています。
また「おる」は「いる」の謙譲語であり、今回は連用形「おり」の形で、そこに丁寧表現の助動詞「ます」が連用形「まし」、最後に過去や完了の助動詞「た」の終止形もしくは連体形が続いています。
「おります」がいわゆる丁重表現として聞き手に配慮した強い丁寧表現であることから、このフレーズは「(以前から)知っていました」や「(以前から)思っていました」という内容を相手に丁寧に伝えるための表現です。
「以前から」の意味は、直接的には該当語がないため必要ありませんが、「た」が「過去から現在に至るまでの継続」を意味するため、暗にそのような意味が隠されていることを説明しています。
「存じておりました」のビジネスでの使い方や使われ方、使うときの注意点
例えば、上司から取引先の経営状態が悪いことについて質問されたとしましょう。
それに対し「実は知っていた」という意味で答える場合、「報告せずに申し訳ありませんでしたが、実は存じておりました」といった形で表現します。
更にその中で、「取引を停止すべきと今まで考えていた」と説明を加える場合、「取引の停止もやむなしと存じておりました」のような内容で伝えます。
「存じておりました」を使った例文
それでは、他にあり得る使用例を挙げてみましょう。
・『既に存じておりました』
・『長い間存じておりました』
「存じておりました」の言い替え
「思っていた」や「知っていた」を丁寧に伝える表現であれば、言い替えとして成立します。
・「承知していました」
この場合の「承知」は「内容を知っている」という意味で、「存じる」よりも深い理解を意味します。
丁重表現は用いず、シンプルな丁寧表現でも問題はありません。
・「考えておりました」
同様の意味がある「思っていました」よりも、より深く真摯に向き合っている意味合いが出せます。
まとめ
「存じておりました」とは、「知っていた」や「思っていた」という意味の丁重表現であり、聞き手に強く配慮した表現となっています。
過去から今に至るまで、ずっと「知っていた」や「思っていた」という意味合いがある表現です。