はっきりとしたことが言えないということは、ビジネスの世界でもよくあることです。
「事情ご賢察いただき」というフレーズはそのような場合に使用されるもので、今回はこれについて解説していきます。
「事情ご賢察いただき」とは?
まず「事情」の意味について明確にしてみましょう。
「事情」とは、「物事の変化や経過の有り様」や「物事がある状態や状況になっている理由」という意味があります。
「賢察」はあまり一般的な言葉ではありませんが、「けんさつ」と読み、「推察」の尊敬表現です。
また「いただき」は、「ご〜いただく」と言う、「〜してもらう」という意味の謙譲表現として使用されており、この場合は「いただく」の連用形として使用されています。
連用形となっているのは、一度内容的に区切ってから次の内容を接続詞や接続助詞抜きに続ける、「(連用)中止法」と呼ばれる手法を使っているためです。
以上を踏まえ、このフレーズは「(自分側)の事情について推察してもらい」という意味の謙譲表現であることがわかります。
「事情ご賢察いただき」のビジネスでの使い方や使われ方、使うときの注意点
このフレーズが使用されるのは、「自分の(伝えづらい)事情を相手が察して、何らかの対応して『くれる』、または『くれた』」場合です。
このフレーズの後には、概ね感謝の表現などが続く傾向が見られます。
例えば、スケジュールの都合で参加できない自分のために、相手が食事会を延期してくれた場合、「事情ご賢察いただき、食事会を延期のご配慮ありがとうございます」と言った形で感謝の意を示します。
一方で、使用される頻度は低いものの、相手に「事情を察して、何かをして欲しい」と言う、「丁寧な要望」の意味で用いられることもあります。
具体的には「当方の事情ご賢察いただき、ご判断いただけますようお願い申し上げます」と言った形での使用です。
「事情ご賢察いただき」を使った例文
それでは、他に考えられる事例を挙げてみましょう。
・『こちらの懐事情ご賢察いただき、会費の徴収を決定されたとのことで、感謝の言葉もありません』
・『事情ご賢察いただき、計画を変更していただけると幸いです』
最初の例文は、事情に「懐」「ふところ」を付けて、「懐事情」という「財政状態の問題」という意味で使用しています。
更に次の例文は、このフレーズを相手への丁寧な要望として使用したものです。
「事情ご賢察いただき」の類語による言いかえ
「事情」については、類語に該当するものがなかなか挙げにくい言葉ではありますが、概ね「状態」や「状況」、もしくは「物事の理由や原因」を意味する「事由」「じゆう」などが挙げられるでしょう。
「ご賢察いただき」という一連の謙譲表現は、「お察しいただき」や「ご理解いただき」などで代用します。
以上のことから、このフレーズの言い替え表現は、「状況をご理解いただき」などが候補になります。
まとめ
「事情ご賢察いただき」とは、基本的に自分側の(伝えづらい)事情について相手が察して、何らかの言動や行動してくれる、またはしてくれたことに感謝するためのフレーズです。
多くはありませんが、相手に「事情を察して〜してください」という意味で使用されることもあります。