職場の同僚が不在の際に、同僚宛に電話がかかってくるという場面は、ビジネスなら日常茶飯事です。
そのような時に使われやすいフレーズの1つに「退勤しております」があります。
ここでは、このフレーズについて詳しく解説していきます。
「退勤しております」とは?
「退勤」は「たいきん」と読み、「勤務を終え帰宅すること」や「仕事を終えて職場を出ること」を意味しています。
「しております」は「して」に「おります」が付いた形となっています。
「して」は「する」の連用形「し」に接続助詞「て」が付いた形であり、「して」の前にある言葉を受けて「〜が継続している」という意味を形成します。
一方の「おります」は、「いる」の謙譲語「おる」に丁寧語の「ます」が付いた丁寧な謙譲表現であり、「丁重表現」と呼ばれることもあります。
「しております」全体で、「〜し続けている(状態)」という意味をかなり丁寧な表現にしているのです。
尚、「退勤しております」というフレーズが使われる場合、本人が既に帰宅してその場に居ないため、本人の代わりに別の人が「退勤している」ことを相手に伝えている場面が想定されます。
「丁重表現」は、話し手が聞き手に対して気を使っているという意味での「謙譲表現」とも言え、話の中に出てくる行為者、つまり退勤している人物に直接かかる敬語表現ではありません。
つまり、「退勤しております」のフレーズ全体で、「誰かが勤務を終えて帰宅している」という情報を、聞かれた話し手が、聞いてきた相手に敬意を示して伝えているのです。
「退勤しております」のビジネスでの使い方や使われ方、使うときの注意点
「退勤しております」というフレーズは、話し手が聞き手に配慮しているもので、退勤している人物は敬語の対象ではないことは既に説明しました。
そのため、部外者の聞き手に対して「退勤」を伝えている場合はもちろん、社内など「内部関係」において聞き手が話し手より目上の場合には、「退勤」の行為者の上下関係問わず用いられる可能性があります。
例えば、部長より下の立場の係長が部長に電話で連絡してきた際に、係長より下の立場の社員が係長に「部長は退勤しております」と伝える場面などが考えられます。
この表現では、社員が係長に配慮して「部長が不在であること」を伝えているわけです。
ただ、やはり聞き手より退勤者の方が目上の場合には、「退勤されました」などと、直接「退勤する」を敬語表現にして伝える方が無難ではあるでしょう。
「退勤しております」を使った例文
それでは実際に使われそうな例文を見てみましょう。
・『既に課長は退勤しております』
・『工場長は既に退勤しておりますが、伝言があればお伝えいたします』
「退勤しております」の類語による言いかえ
「退勤」の類語としては「退社」「たいしゃ」が考えられますが、「退職」の意味もあるため、「帰宅」「きたく」の方が誤解を招かない表現と言えるはずです。
また、文章表現であれば、「勤務を終える」あるいは「勤務を終えて職場を出る」というフレーズの使用もあり得ます。
それらを踏まえると、「帰宅しております」や「勤務を終えて(職場を出て)おります」といった形での言いかえが考えられるでしょう。
まとめ
「退勤しております」とは、連絡してきた相手に「連絡を取りたい相手が既に退勤していること」を、丁寧に伝える意図のある謙譲表現です。