第三者の行為を相手に伝えるというのは案外難しいものです。
「おっしゃっていました」もそのような表現の1つであり、これより詳しく解説いたします。
「おっしゃっていました」とは?
「おっしゃっていました」を文法的に分解してみましょう。
まずは「おっしゃって」の部分から。
「言う」の尊敬表現「おっしゃる」の連用形「おっしゃり」が、続く接続助詞「て」との絡みで発音しにくいため、「り」が「っ」に置きかわる、いわゆる「促音便形」となったものが「おっしゃって」です。
尚、「おっしゃる」を漢字で書くと「仰る」になりますので覚えておきましょう。
次の「いました」は、「いる」の連用形「い」に、丁寧表現を作る助動詞「ます」の連用形「まし」が付き、更にそこに、「過去」や「完了」を表す助動詞の「た」の終止形が続いた形です。
「動詞」「ている」は、ある状態が続いていることやある結果が続いていることを表現します。
この場合は「ていました」で過去形の丁寧表現となっていますから、「(当時)ある状態が続いていました」という意味だとわかります。
もちろん、この「〜が続いていた」というのは直接訳さない場合が多く、そのまま「〜していました」と訳して問題ありません。
つまり、「おっしゃっていました」全体で、「(尊敬語の対象となる人物が)言っていました」ということを尊敬表現と丁寧表現を用いて伝えているのです。
「おっしゃっていました」のビジネスでの使い方や使われ方、使うときの注意点
注意すべきは、「おっしゃっていた」のは、このフレーズの内容を伝えている話し手(文章表現でも使われるので、便宜上)とは「別人」の「尊敬対象者」であるということです。
そして直接伝えている聞き手(こちらも便宜上)には、「いました」と丁寧語で、「尊敬対象者が言っていた」ことを話し手が伝えています。
通常、聞き手がもし外部の人間であれば、「おっしゃっていた」尊敬対象者より更に尊敬上位の対象となるので、「言う」の謙譲語である、「申す」や「申し上げる」を用いて「申して」や「申し上げて」となるはずです。
そして「いました」の部分も、いわゆる「聞き手に配慮する」丁重表現とするため、「いる」の謙譲語「おる」を使って「おりました」とすべきです。
つまり、この聞き手は内部の人間か、「仰った」人物より目下の人間であり、話し手と聞き手の関係もほぼ対等と見て良いでしょう。
もちろん、「おりました」は、強い丁寧表現たる丁重表現ですので、仮に「おっしゃっていた」人物より尊敬度合いが低い場合でも使用可能です。
「おっしゃっていました」を使った例文
それでは、このフレーズが使用された例文を挙げてみましょう。
・『部長はそうおっしゃっていました』
・『社長が仰っていましたので、事実かと思います』
「おっしゃっていました」の類語による言いかえ
このフレーズでは、話し手と聞き手より上位の尊敬対象者が「言った」ので、「おっしゃる」を使わざるを得ません。
つまり変えることができるとすれば、既に説明した通り、単純な丁寧表現の「いました」を丁重表現の「おりました」に変える程度でしょう。
まとめ
「おっしゃっていました」は、話し手と聞き手より上位の立場の人間が「言っていた」ことを尊敬表現で表すとともに、聞き手には丁寧表現で伝えているフレーズです。