ビジネスシーンでは、敬語表現の正確な使い分けが必要となります。
そのような中、「思っておりましたので」は重要な敬語表現の一例となるフレーズですので、これより詳しく解説してみたいと思います。
「思っておりましたので」とは?
まず、「思っておりました」までの部分を、活用を意識して文法的に区切って解説してみましょう。
「思う」の連用形「思い」に、接続助詞の「て」が付く形ですが、「思いて」ではなく「思って」となっているのは、発音しやすいように「い」が小さい「っ」となる促音便変化をしているためです。
その「思って」に「いる」の謙譲表現である「おる」の連用形「おり」が付き、さらに丁寧表現の助動詞「ます」の連用形「まし」、過去や完了(今回のフレーズでは存続の意味で使用)の助動詞「た」の連体形が続きます。
そして最後の接続助詞「ので」は確定の順接を表します。
以上を踏まえると、「思っておりましたので」は、「思っていましたので」という意味の謙譲表現フレーズになります。
さて、答え合わせはここで終わりではなく、このフレーズの謙譲表現には1つ重要な問題が残っています。
通常、謙譲表現とは、自分の動作が敬意を示すべき相手に向かう場合に、自分の動作を「へりくだらせる」ことによって、相手を立てるための表現技法です。
しかしながら、今回の「いる」や「おる」という動詞は、相手に向かわず自分だけで完了する、英語の動詞で言えばいわゆる「自動詞」というものに該当します。
このような、自分で完結する動作(動詞)もしくは聞き手ではない「第三者や物」に向かう動作(動詞)を謙譲表現(プラス「ます」の丁寧表現)にすることを、いわゆる「丁重表現」として、強めの丁寧表現を意味する特殊な謙譲表現の一種という扱いをすることがあります。
そして、この「思っておりました」の「おります」の部分は、まさに「丁重表現」に該当するのです。
「思っておりましたので」のビジネスでの使い方や使われ方、使うときの注意点
上記で説明した丁重表現は、話し手が聞き手に敬意を表するために使われる表現であるため、ビジネスシーンではよく用いられます。
そして今回のフレーズは、自分が現在に至るまで、一定期間継続して「思っている」ということを、相手に丁寧に伝える意図があります。
このフレーズの後には、この「思っておりましたので」の前にある「内容」に対して順当な内容のフレーズが続きます。
「お忙しいのではないかと思っておりましたので、今回はご遠慮いたしました」のような形で用います。
「思っておりましたので」を使った例文
それでは、上記以外の実際の使用例を挙げてみましょう。
・『事実関係を疑問に思っておりましたので、まだ結論は出していませんでした』
・『部長がお使いになるのではないかと思っておりましたので、事前に準備しておきました』
「思っておりましたので」の類語による言いかえ
「思って」の部分は「思う」の謙譲表現「存じる」を使って、「存じて」と言いかえることができます。
因みに、この「存じる」も自動詞的な意味ですから、本来は丁重表現としてカテゴライズされます。
そのため、「存じていました」とすれば代用できるでしょう。
また、「ので」は「から」という接続助詞で、ほぼ同じ意味となります。
全体を踏まえると、「存じていましたから」という言いかえが成立するでしょう。
まとめ
「思っておりましたので」は、「思っていましたので」という内容を、聞き手に配慮して伝えるための表現です。