社会人ともなると、それまで使ったことのないような丁寧な表現をする必要が出てくるものです。
今回の「かねがね承っております」というフレーズもその典型例であり、これより詳しく解説いたします。
「かねがね承っております」とは?
最初に気になるのは「かねがね」の意味ではないかと思います。
意味としては、「以前から」や「前々から」という意味のかしこまった表現です。
一方「承っております」については、まず文法的に分解することから始めましょう。
「慎んで聞く」や「拝聴する」または「慎んで承知する」という謙譲表現の「承る」「うけたまわる」の連用形が「承り」になります。
ところがこの後に接続助詞の「て」が付くと、発音しやすいように「り」が「っ」という促音になる、いわゆる促音便変化が起きるため、「承って」という形になっているのです。
「おります」は、動詞「いる」の謙譲表現「おる」の連用形「おり」に、丁寧表現の助動詞「ます」の終止形もしくは連体形が付いた形で、いわゆる「丁重表現」と呼ばれる特殊な謙譲表現(言い替えれば、強い丁寧表現でもある)の形となっています。
よって、「かねがね承っております」とは、「以前から承知しています」という表現を、聞き手に配慮した極めて丁寧な形にした表現なのです。
「かねがね承っております」の使い方や使われ方、使うときの注意点
かなり目上の人を相手にする場合か、外部の顧客などを相手にする場合に、「以前から聞いています」や「以前から知っています」ということを表現するために用います。
例えば、客から商品破損についてのクレームが来たことを、連絡を受けた同僚から担当者が聞いていて、その客から改めて担当者に連絡があった場合、「商品の破損については、かねがね承っております」と言った形で伝えます。
「おります」などを用いた「丁重表現」が、聞き手に対して強い敬意を表す表現であることを意識して使用しましょう。
「かねがね承っております」を使った例文や文章
それでは、他に考えられる使用例を挙げてみましょう。
・『その件につきましては、かねがね承っております』
・『かねがね承っておりますので、どうぞご安心ください』
・『お噂については、部長よりかねがね承っております』
「かねがね承っております」の類語や言い替え
「かねがね」については既出の「以前から」や「前々から」の他、「かねてより」などでの代用が考えられます。
「承る」の言い替えについては、「拝聴する」や「承知する」と言った表現の他、「伺う」や「承諾する」または「お引き受けする」などがあり得るでしょう。
以上のことから、このフレーズ全体の言い替え候補として「かねてより拝聴しております」や「前々から伺っております」などが挙げられます。
まとめ
「かねがね承っております」とは、「以前から聞いています」や「前々から知っています」ということを、聞き手に配慮する意図で強めの丁寧な表現(丁重表現)にしたフレーズです。
「おります」は、「丁重表現」で使用されることに注意しましょう。