ビジネスにおいては、相手との共同作業的要素も多く見られます。
このような過程の中で、「ご共有いただいた」というフレーズが使用される場面があり、今回はこのフレーズについて解説いたします。
「ご共有いただいた」とは?
まず「共有」の意味から考えてみましょう。
「共有」とは、「1つの物を2人以上で所有すること」ことです。
その上で、対象となる「物」は、有形物でも無形物としての「情報」や「認識」もしくは「権利」などでも構いません。
次に考えなくてはならないことは、このフレーズの表現についてです。
始めにこのフレーズを文法的に解説すると、「ご」「共有」という並びに続き、「いただく」の連用形である「いただき」に過去を表す助動詞「た」が付いた形になります。
本来であれば「いただきた」となるところを、発音しやすくするため「き」が「い」になり「いただいた」となっている、いわゆる「イ音便」と呼ばれる変化です。
また、「た」は単純な「過去」の意味から、「完了」や過去からの「存続」などの意味も作り、この場合も文脈によっては幾つか解釈が分かれます。
さて、話を戻すと、この「ご共有いただく(便宜上「原形」にしてあります)」は、「ご〜いただく」の典型的な謙譲表現パターンの1つで「〜してもらう」という意味の謙譲表現を作ります。
ですから「ご共有いただいた」は、「共有してもらった(もらった状態が現在まで続いている)」という内容を謙譲表現にしたものなのです。
「ご共有いただいた」のビジネスでの使い方や使われ方、使うときの注意点
ビジネスシーンにおける「共有」も、先程説明した「有形物」や「無形物」の両方の意味で用いられます。
例えば、倉庫を複数の会社で共有するような場合は「有形物」の「共有」です。
この場合、「ご共有いただいた倉庫を取り壊す件について」などと使われます。
ただこれを権利関係の観点から、「倉庫の所有権」を共有していると見れば、無形物の共有と言えるでしょう。
「ご共有いただいた倉庫の所有権ですが、有償譲渡を考えています」などと使われます。
一方で、権利関係以外の「無形物」の「共有」もよく使われます。
「情報を共有する」などの表現がこれに該当し、最近ではこちらの意味でも多用されがちです。
この場合は、「ご共有いただいた課題について」などの仕様例が考えられます。
「ご共有いただいた」を使った例文
それでは、他に考えられるこのフレーズの実例を挙げてみましょう。
・『ご共有いただいたオフィス』
・『ご共有いただいたクラウドのファイル』
「ご共有いただいた」の類語による言いかえ
有形物や無形物の権利関係に関しては、単純に「共同所有」を「共有」の言いかえとして使用しましょう。
一方、それ以外の無形物の場合には、「お互いに持つ」や「分かち合う」などの方がしっくりくるでしょう。
また、敬語表現そのものの言いかえとしては、「ご〜いただく」を「ご〜くださる」という尊敬表現に置きかえるパターンがあるので、それを利用しましょう。
この場合であれば、「ご共有くださる」を過去形にするため「ご共有くださった」となります。
本来は「くださる」の連用形「くださり」に過去の助動詞「た」が付く形ですが、それが言いやすいように促音便で「くださった」となっています。
まとめ
「ご共有いただいた」とは、「共有してもらった」を謙譲表現にしたものです。
「共有」対象は有形物でも情報や認識、権利などの無形物でも成立します。